とてもめずらしい初期型のAM-Speedです。
ご依頼頂いたお客さまの「熱いスピリット」に応えるべく
レーシング仕様に向けてカスタマイズしていきます。
モールトン17inchモデルのブレーキキャリパー台座は、ロングリーチで設計されているのでマッドガードの取付けが可能ですが、一般的なロードバイクはロングリーチより剛性の高いショートリーチが主流です。(ディスクブレーキは除きます)
近年ではロングリーチ用のオフセットブレーキアダプター(※)が市販されていたり、取付アダプターを製作すればショートリーチブレーキで組むことは出来ますが、それはあくまでブレーキシューを適性な位置に調整するための部品であって、ショートリーチ本来の特性であるブレーキ本体の剛性を上げることではありません。
ショートリーチブレーキ本来の性能を活かすにはフレームを加工する必要があるため、まずはその作業から取り掛かります。
※オフセットブレーキアダプター:ブレーキシュー位置をロングリーチのシュー位置まで大きく下げることの出来るアダプター
塗装の剥離後
続いてリアフォークの塗装を剥離していきます。
剥がれにくい箇所はワイヤーブラシなどを使いますが、
トラスチューブの重なっている隙間などはサンドブラストを使います。
砂(メディア/研磨材)を当てすぎないように注意を払いながら作業をします。
ようやくリアフォークの塗装が綺麗に剥がせました。
新しいブレーキブリッジをロウ付けするために、既存のブレーキブリッジとブリッジ下にある「X」の形をしたトラスチューブを切断します。
モールトンはステンレスの部材でない箇所は真鍮ロウでが使われています。
真鍮ロウは銀ロウに比べて融点温度が高いのが特徴です。
モールトンは肉厚が薄い母材を採用しているので高い温度で何度も炙ると脆くなるため、
少しでもそのような事を防ぐために炎では炙らずに削り落とします。
再度ロウ付けするときは、融点温度の低い銀ロウでロウ付けを行います。
母材を削らないように慎重に注意しながら
ブリッジの残骸をヤスリ等で綺麗に取り除いていきます。
細いトラスチューブを切断した箇所も綺麗に整えます。
ブレーキブリッジを取付ける準備が整いました。
ブレーキブリッジのロウ付け作業を行う前に、メインフレームにリアフォークを組み付けて、フレーム製作治具にセットします。
外径(12.7mm)内径(0.5mm)と、共に細いチューブで構成されているモールトンのフレームは炙ると簡単に歪みます。
話は逸れますが、以前、当事例と同じようなブレーキブリッジ加工が施されたモールトンのカスタマイズをご依頼いただいたことがあり、その際の事前打ち合わせでブレーキブリッジのフレーム加工はリアフォーク単体で作業されたと伺っていたので、アライメントを点検するとフレームの中心よりリアフォークセンターが大きくズレていました。
リアフォーク単体で作業を行なったためズレが生じてしまったと思いますが、
ホイールリムの中心に正しくブレーキキャリパーが取付けられていたとしても、
フレームにリアフォークをセットして自転車全体で確認しないとホイールがフレーム中心よりズレてしまう場合があります。
細かい表現で例えると、リアホイールを引きずるように走る感じです。
ブレーキキャリパーの取付位置も大切ですが、リアフォークの歪みがフレーム中心よりも大きくズレないことの方が重要です。
まずはブレーキブリッジの取付位置を確認するために点付け(仮付け)します。
ブレーキブリッジの位置が決まったところでブレーキブリッジに付帯しているリアフォークの「X」の形をしたトラスチューブをロウ付けしていきます。
この「X」の形をしたトラスチューブも一から純正と同じカイセイパイプで製作しています。
ちなみに、このリアフォークにある「X」の形をしたトラスチューブは
補強の役割も担っていてAMシリーズとAPBに見られます。
TSRについてはリアフォークのパイプ径が太いため下側のチェーンステイにのみ補強がなされています。
ここからは銀ロウ付けした部分を綺麗に整えます。
ブレーキブリッジの位置をロング用からショート用の位置に変更する
フレームのカスタマイズが完成しました。
ここから塗装に出しますが、
再塗装するのはフレーム加工したリアフォークとサブフォークの2点だけですが
塗装しないメインフレームとの誤差をなるべく少なくしたいので
全塗装でない場合は毎回ドキドキします。
とにかく全体の雰囲気を大切にして違和感なく仕上げたい
というのが当事例に限らず全ての作業の根本にあるので
良い感じに仕上がって返ってきた時は安心します。
Part.2に続きます。