2023-01-23

Moku2+4 Original AM-22(New Blue)

AM-22のフレームキットをブリティッシュなイメージでスポーティに組み立てました。

コンポーネントは、Campagnolo RECORD 11s(絶版品)に
サドルとバーテープの配色でアクセントをつけました。
コンポーネントのCampagnoloは、新品とUSED 美品を組みわせています。
価格はお問い合わせいただければ幸いです。(ペダルは含まれておりません)

クラシカルな雰囲気の5アーム カーボンクランクセット。

クランクセットにはSUPER RECORDを使っていますが、SUPER RECORDのみ、
標準で回転抵抗の低いセラミックベアリングが採用されています。

RECORD カーボンディレイラー。

RECORDのブレーキアーチを取り付けために
Moku2+4オリジナル・ショートリーチブレーキアダプターを製作。

RECORD カーボンエルゴパワー

ハブのブラックに合わせて、スポークもブラックにしてスポーティさを出しました。

ステムは、クラシカルなデザインのNITTO製 Clamp-on。
フレームはスレッドステム仕様でオーダーしています。

レザーバーテープは、BROOKS ロイヤルブルー。

サドルは、selle italia MITICAのレッド(絶版品)
鮮やかな発色の赤色が全体のアクセントになっています。


                 <組み立て編>

フレームが納品されたら、まずリアフォークピボットの調整から始めます。
英国より届いた調整する前の車両は、リアフォークの動きが渋いことが殆どで、時にはガタも出ています。リアフォークピボットの動きが渋すぎると、リアフォークの破断に繋がることもあります。
ガタがなくスムーズにリアサスペンションが動くように調整しますが、この新車整備のタイミングでベストな調整を狙うのではなく、数年後をイメージして調整しています。

このリアフォークピボットは、17インチと20インチでは構造が異なりますが、乗っていくと必ずガタが発生する箇所です。
どのぐらいでガタが出てくるのかについては、走行距離や乗り方(パワーで回すトルク型と回転型の違い)、摩耗度合い、グリスの減り具合などによっても異なるため一概には言えませんが、オーバーホール等でお預かりした車両は、普段どのように乗られているかということも頭に入れながら調整しています。

先日メンテナンスのご依頼を受けた女性のお客様の場合ですと、3年間で2万km走行されていましたが、ガタが発生していました。新車の状態でしっかりと整備をしていても、タイヤやワイヤー類などと同じで、走行距離が伸びていけば摩耗・消耗していく箇所なので、見逃されがちですが定期的なメンテナンスが必要なところです。

ここの調整は感覚的な部分にもなるので言葉では説明できないのですが、この感覚はお客様から二度目、三度目、四度目と継続してご依頼いただくオーバーホールから培われていくものなので、長い年月と経験が必要な作業です。

Moku2+4オリジナル フレーム定盤に載せてフレームアライメントを点検します。

リアエンド幅、左右リアエンド位置のズレを点検します。
ズレがある場合は、1mm以内の範囲で削って修正します。

フロントフォークを分解した画像ですが、英国からはフォーク一式組み立てられた状態で納品されるので、アライメント調整するために再度分解し、同時に使用されている安価なグリスを洗い落とします。

Moku2+4オリジナルで製作したフォーク定盤でフォークアライメントを点検します。

左)スタラップ(サブフォーク)の左右エンド位置の点検。
右)リーディンクリンクプレート接触面の平行度を点検。
この部分のズレが大きいとサスペンションの動きにも影響が出てきます。

フォークエンドブッシュのコーティングが剥げていたので、新しい物に交換します。
こういう事例は珍しくありません。
英国でフロントフォークを組み立てる際、リーディンクプレートを強引に押し込んだのだろうと想像できます。

このコーディングが剥げていても急に何か起こることは無いですが、そもそもフォークエンドブッシュに無給油ブッシュ(グリスが不要なノングリス製品)を採用しているのに、新車の段階でコーティングが剥げているのは問題なので、新しいブッシュに取り替えます。

このパーツもリアフォークピボットと同じで、距離や使用状況で摩耗・消耗度合いが異なるので、新車整備の際にはどのような使用方法であっても本来の性能が発揮されるように、採用されている各部パーツの「目的」を考え、交換が必要であれば新しいものに交換してお渡ししています。

左)フォーククラウンのフェースカット前。
右)フェースカット後。

しなやかに動くサスペンションを目指して、細かい加工を要所要所に施してしていますが、その理由を少しだけホームページのサイトと合わせて説明してみます。

画像はリーディンクリンク式フロントサスペンションの構成パーツです。
AMシリーズ、TSR、SST共に構成パーツは同じものが使われています。

サスペンション・ピストンとアジャスターとの隙間にラバーシール(ゴム質の黒色パーツ)を取り付けます。
このラバーシールの目的は、フロントフォーク内に水や砂等の侵入を防ぐためのパーツです。
リーディングリンク式のラバーシールは、AMシリーズ、TSR、SSTと共通ですが、約15年以上前は、AMシリーズとTSRとでは、役目が同じでも形が違いました。
旧式のラバーシールはモールトン社製でしたが、現在のラバーシールは汎用品を使っています。

旧式のラバーシール:矢印の部分の厚みは約1mm。

新式のラバーシール:厚みは約2mm

サスペンション・ピストンとアジャスターに青矢印の隙間があります。
ここに2.0mm前後の隙間を設けるのがモールトンの設定です。

この隙間にラバーシールを取り付けますが、旧式の厚みは1.0mmで新式の厚みは2.0mm。
ラバーシールの厚みが隙間と同じ2.0mmという事は、サスペンション・ピストンとアジャスターの隙間がない(遊びがない)、埋まっている状態となります。

なぜ、隙間が埋まってしまうといけないのかというと、
画像のようにラバーシールを付けていない状態では、ピストンは自由に頭を振る(動く)ことができます。でもこれでは水や砂埃などが侵入してしまう。
逆にラバーシールによって完全に隙間が埋まってしまうと、頭を振ることが殆どできなくなってしまいます。
このサスペンション・ピストンは上下に動くのですが、垂直に動くのではなく、角度の付いた状態で動きます。なので角度が付きにくい、または角度が付いていない状態でサスペンションが動くと、摺動抵抗(摩擦抵抗)が発生し、スムーズに動くための妨げになります。
スムーズにピストンの頭を振らすためには、ピストンとアジャスターとの間にわずかな隙間を設けなければなりません。
旧式のラバーシール厚は1.0mmだったので、ピストンとアジャスターとの間にも約1.0mmの隙間がありましたが、新式のシールだと隙間がありません。
そこでサスペンション・ピストンであれば多少厚みを削っても構造的にも問題は無いので削ります。

サスペンション・ピストンを旋盤で削っているところ。

左)加工後
右)加工前

左)加工後のピストン + ラバーシール(新式)
右)加工前のピストン + ラバーシール(新式)

右側の画像のとおり、加工前のピストンは真上からすっぽりと収まってしまうがゆえに隙間が出来ていません。このままでは摺動抵抗(摩擦抵抗)が大きくなります。
抵抗が大きいと「スムーズな動き」の妨げになるため、それを減らすためにサスペンション・ピストンを加工します。
Moku2+4では、毎回、全車種の新車時の組み立てでは、この加工を行っています。

このようにモールトンのサスペンション構造は、部品ひとつひとつの組み立て方次第で大きく変わります。全て手作業で調整していくので、組み立てる人によっても大きく変わるところです。
この加工作業以外でも、リーディンクリンクの加工、スプリング両端の研磨、
フォーク&スタラップ(サブフォーク)のアライメント点検・修正、リアフォークピボット調整など、まだまだたくさんの工程がありますが、こういった細かな加工作業を経てようやく「滑らかに動くモールトンのサスペンション」が体感できるのです。


キングピンのストッパーボルトを製作。
右が純正。
左が新しく製作。

新しくボルトの製作

ストッパーボルト完成。

キングピンのフレーム側にバリがあったので研磨します。
塗膜が厚くてキングピンが入りづらいことも多いので、その時は軽く研磨しています。
この塗膜が厚い件については、モールトンの至る所で見受けられるので、適宜研磨しています。
このように新車整備の作業については、気になる点も多々あるので、新車時でも細かい部分まで分解し直す必要があります。モールトンが素晴らしい製品だからこそ、その素晴らしさを存分に体感していただきたいと強く思うので、ただ単に販売するために組み立てるのではなく、Moku2+4が考えるのベストなモールトンを常に目指しています。

このNew BlueのAM-22は、さらりと上級パーツを合わせてスタイリッシュに組み上げました。
このままでもすっきりとした色気のあるモールトンに仕上がったと思っていますが、ここから発展してキャリアやバッグを付けてもまた違った表情を見せてくれると思うので、使い方次第で如何様にも楽しめると思います。Moku2+4のクラシカル スポーツ モールトンです。