オーダー時に身長と股下を計測して、そのデータを基にモールトンを組んでいきます。こちらの女性オーナーもデータ通りに組んでいくと、ちょうどサドルの高さとハンドルの高さが同じぐらいで、今からドロップハンドルを始めるのに丁度良いぐらいのポジションです。 |
手で持っているステムが純正のステムですが、そのまま加工しないで取付けると、画像右のようなポジションになります。サドルの高さよりハンドルが高くなりすぎると、見た目にもあまりかっこ良くないですし、それ以前に肩が上がって、とても乗りにくいポジションになってしまうので、ステムを短く加工しました。
これだけステムを短く加工してしまうと、モールトン純正のウィッシュボーンステムじゃなくてもいいんじゃないか?と思われるかもしれませんが、既存のパーツでは対応できないので、加工せざる終えないといった感じです。例えば、左の手で持っているステム(40mm)を取付けると、ハンドルの高さは高くなりませんが、ハンドル1本以上も前に出てしまい、サドルとハンドルの距離が遠くなって、腕が突っ張った状態になってしまいます。上りの時にハンドルを引き寄せたり、疲れてきたときに力を逃がしたり、疲れず効率よく走ることができなくなるので、ハンドルの高さも大切ですが、ステムの突き出しも併せて考える必要があります。また、ハンドル幅も女性用の狭いタイプにしています。純正ウィッシュボーンステムに、このハンドルは取付けられませんが、短く加工しているので取付けることができました。基本的にモールトンのフレーム(トップチューブ長)は一種類しか無いため、小柄な方だとパーツを加工したりすることで、より完成度の高いモールトンに仕上がります。
次にクランクの長さについてですが、画像左の長い方が加工前で、右の短い方が加工後です。あきらかに長さの違いが判断できます。このクランクはカンパニョーロなので、170mm以上からの設定しかなく、どちらかというと男性向けのサイズ展開ですが、170mmはこのオーナーには長すぎます。脚が大回りになりすぎて回転効率が悪いので、軽快かつスムーズに回せるようにクランクを短く加工しました。ステム、ハンドル、クランクとパッと見た感じは大きなカスタマイズをしているようには見えませんが、体格に合わせて組まれた自転車は、走ってて気持ちが良いです。モールトンについては自転車そのものの良さも当然ありますが、このような目立たない部分にも手を加えることによって、小柄な方でも、筋力に自身のない方でも、力を無駄なくしっかりと自転車に伝えられるため、自転車もパーツもスムーズに動いている感覚を感じ取ることができて楽しさが倍増します。一生懸命漕いでないのによく進むなぁという感じですかね。ポジションは筋力によって変わりますが、体格の計測データを基本としてセッティングしていきます。そこから筋力が付いてきたら前傾にしてと、体と共に自転車も変化させていく、そんなカスタマイズも増えてきています。