2023-11-30

モールトンで天空のパワースポット「大丹倉」へ(三重県熊野市)


 

2023年9月29日
まだまだ残暑厳しい9月末、8月に続いて再び紀伊山地へサイクリングに行ってきました。
今回は、奈良県と三重県に村ごとぐるりと囲まれた日本で唯一の飛び地、和歌山県北山村にある ” 道の駅 おくとろ” にクルマを止めて、修験道の山にある二つのポイントを目指しました。一つ目は三重県熊野市の山中にある巨岩の神社「丹倉(あかぐら)神社」、二つ目はその先にある高さ200m幅500mにも及ぶ大きな岩壁、修験道の聖地でパワースポットとも呼ばれている「大丹倉(おおにぐら)」です。

走行距離は約30km。”道の駅 おくとろ” には、温泉施設も併設されているので人生初のなんちゃって車中泊にもチャレンジしました。
山の自然に圧倒され、元気をもらった2+4Styleサイクリングレポートです。


6:30 

西京極本店を出発。


8:50 

奈良県の"おおたき龍神湖"沿いにある ”道の駅 杉の湯川上" に立ち寄りました。

ここの道の駅は大台ヶ原や熊野方面へのドライブの拠点なのだそうで、澄んだ空気が本当に気持ち良かったです。

9:00開店まで少し待ちます。何気に買った柿の葉寿司、素朴な味わいで美味しかったです。もうひとつ買えば良かった...。


昨年、吉野山の日帰り輪行の昼食場所で立ち寄った "道の駅 吉野路黒滝" が地図上では山の向こう側に位置しているのですが、こちら側は吉野川の上流部ということもあって、山の規模もダイナミックで雰囲気も全然違います。


9:30

奈良県の "道の駅 吉野路上北山" が通りすがりにあったので立ち寄りました。


9:50

道の駅のすぐそばを流れる北山川。

綺麗な川辺まで階段で下りて行けます。

奈良の山間は空気も景色も穏やかで本当に落ち着きます。

この "吉野路上北山" の道の駅を拠点にサイクリングするのも楽しそうです。


10:50

サイクリングのスタート地点、和歌山県にある "道の駅 おくとろ" に到着。

駐車場も広くて、山と川に挟まれた静かで落ち着いた道の駅です。


準備ができたら吉野路上北山で買ったさんまの姿寿司を食べて腹ごしらえ。


事前にルートマップは作成していきますが、その時はモールトンで走れそうな道なのか路面環境を軽く確かめる程度で、当日は平坦基調なのか、どの程度のアップダウンがあるのか分からないまま走っていくので、毎度毎度いつ食事ができるか分からないということもあって、いつも一度にお腹一杯食べるのではなくて、お腹が減る前に少しずつ食事をとっています。


11:30(気温27℃)

ようやくサイクリングがスタート。


走り出して数分、北山川に掛かる上瀞橋(かみどろばし)を渡ります。

格子状のグレーチングタイプの吊り橋だったので美しい川が足元から透けて見えます。

高いところが苦手なので景色を楽しむ余裕は全くありませんでしたが絶景ポイントです。

ちなみにこの橋の重量制限は1tなんだそうです。ちょうど渡り終えたタイミングですれ違いで軽自動車が橋を渡たっていったので「クルマも渡れるの?」とビックリしたのを覚えています。


11:50

スタートしてから20分。

吊り橋でもたつきましたが、和歌山県から三重県に入ります。



12:00

集落の中を走って、尾川川の橋を渡ります。

途中にジビエ料理の古民家カフェを見つけたのですが、あいにく定休日でした。

ここからゆっくりと高度が上がっていきます。


林道に入ってきました。

勢いよく岩肌を流れる清流 尾川川。


緩やかな林道を登っていくと、こんな小さな滝もちょこちょこ現れます。


12:30

山の中腹あたりにある大丹倉(おおにぐら)展望地に到着。


案内板によると、「丹」という字には赤い色という意味があるそうで、岩に含まれている鉄分が風化して酸化したため、所々に赤みを帯びた部分があることから「丹」という字が付けられたとのこと。「倉」という字は断崖絶壁の山を表していることから、赤い断崖絶壁の山という意味でその名が付けられたそうです。


またこの地域は修験者たちの聖地とも書かれてありました。

修験道とは、山岳地帯で厳しい修行を行って霊験を得ることなどを目的としていて、大丹倉の中腹には行をしたという10畳以上の石畳があり、修行の場に適していたとのこと。

熊野三山に参拝者が訪れる以前からこの地域に根付いていたそうで、古代から修験道が盛んな地域だったようです。


左側に見える大きく突き出した断崖絶壁の高さ200m幅500mの岩が最終目的地「大丹倉(おおにぐら)」です。

この辺りから赤倉(あかぐら)林道に入ります。


「丹倉」にも、にぐら、あかぐら、と読み方が違うんですが、そこからさらに漢字も含めると、神社のあかぐらは丹倉、この先にある集落のあかぐらは赤倉、となっていてこの細かな違いまでは分かりませんでしたが不思議な地域です。


静かな赤倉林道。


13:10

「丹倉(あかぐら)神社」に到着。

えっちらおっちら走っているとふわりと神社の鳥居が現れました。

林道沿いにあるにも関わらず、山に溶け込み過ぎて通り過ぎそうになりました。


林道に入ってからは人っ子ひとり出会いませんでしたが、山深い神社の鳥居の脇には青々とした榊が供えられていました。


石段を降りていくと、


大きくて立派な自然石のご神体です。


10mはあると思われる苔むした岩のご神体の上には樹木が育っていました。


山深い場所にも関わらず山の水がとめどなく流れ出ている手水舎がありました。

めちゃめちゃ冷たい!


モールトンで気になる地域を巡るようになってから、神社にもたくさん出会いましたが、こういった自然と共生している神社は社殿のないシンプルな佇まいのものも多く、社殿があっても手水舎の水が閉ざされていたり、そもそも備わっていないところもあるのですが、このような手水舎が備わっている山の神社からは、生きてるというか何というか、いつも大きな生命力を感じます。


丹倉神社は社殿も拝殿もなく、祭神も不明とのこと。

自然信仰の原点ともいわれているところなのだそうですが、この雰囲気は言葉でも画像でも表せません。


大きくて丸い不思議な石。

神が宿るとされる石「磐座(いわくら)信仰」の名残なのだそうです。


13:25

丹倉神社を後にして、もう少し先にある大丹倉(おおにぐら)へ向います。


赤倉林道は本当に気持ちの良い林道です。

じわりじわりと上っているのですが、道の両脇にはふざふさの苔の絨毯が続いていて、陽に照らされた苔がキラキラと光っていたりと、目に入る小さな景色がゆっくりと変わっていくので全然飽きません。こういった足元の小さな風景に気付けるのも自転車だから、上りだからこそですね。


こんなところにも立派な岩が。


13:55

大丹倉の入り口に到着。


木の根が張って自転車を押して歩くには不向きな山道でしたが、ゆっくりならモールトンを押して行けそうだったので、とくかく行けるところまで進みました。自然の苔が美しい。


木の根もなくなり、ふっさふさの苔の絨毯が広がっていました。

苔を傷つけないように踏み固められた細道を進みます。



またまた木の根の張る山道に差し掛かり、もう少し進むと芝の生える平坦な広場に出てきました。


その広場の奥に鳥居がありました。

これ以上はモールトンでは進めなかったのでここに置いておきます。


この大きな岩が赤倉林道の中腹辺りから眺めていた大丹倉です。

手すりも何もありませんが、この大きな断崖絶壁の崖を上ることができます。

天空のパワースポットと呼ばれているところです。


すごい!コワイ!足がすくみます。

岩の上を這うのが精一杯で怖くて立てたもんじゃないですが、それにしてもすごい景色です。風も全く吹いていませんでした。





14:30

大丹倉には奈良の橿原神宮の遥拝所もありました。

ここから下りた芝の広場で干し芋やお煎餅を食べて少し休憩してから大丹倉を後にしました。


この後、山を下ってすぐ、野性の鹿に遭遇しました。山の上から勢いよく横切ってきたので、もう少し見たかったなぁと思っていたら、すぐ先のカーブでその鹿が耳をピンと立ててこちらを見ていました。

ただこちらの様子を伺っていただけだと思いますが、10mほど離れていてこれ以上近づくと逃げてしまうと思いすぐに立ち止まり、少しでも長く見ていたいと静かにしていると、木々の間から差す陽の光も重なって、神々しさで時が止まったようでした。ほんの5秒ほどだったと思いますが、我に返って撮影しようとハンドルから手を離した瞬間、ぴょんぴょーんと跳ねて山へ戻っていきました。一瞬の出来事でしたが、丹倉神社の近くだったこともあって幻想的な光景でした。


15:00

雨滝に到着。

山を上っていく途中で見つけていたのですが、とにかく先へ急ごうと通り過ぎていたので寄ってみました。



左手に階段があったので上ってみると、遠くの方に小さな滝が見えました。

この日はこれ以上の景色が見られなかったのでこのまま帰ったんですが、帰宅後調べたらどうやら下に降りられる道があって、滝壺まで行けるみたいでした。残念!

自転車を止めた場所の右側辺りに木々に覆われた細ーい山道があったみたいなんです。

案内板の写真と同じ角度からの滝が見られたようです。


15:30

尾川川まで戻ってきました。

神社での参拝や休憩、撮影時間などを除くと約2時間掛けて大丹倉まで上って、その半分の時間で下りてきた感じです。

上りと下りでは同じコースでも見える景色が違うはずなのにスピードが早い分、印象に残るポイントが少ないと感じます。上りはしんどいですが、自転車で山を上る方がゆっくり進む分、細かな印象も深く残るので好きです。


16:00

道の駅 おくとろに戻ってきました。

とても落ち着く地域だったのでこのまま帰るのも惜しい気がして、観光センターで当日宿泊できる施設を聞いてみたところ、予約なしで宿泊できるかは分からないけれど道の駅に併設しているコテージと少し離れた民宿を教えていただきました。

日帰りか宿泊か、その時の雰囲気で決めようと考えていたので、お風呂セットと着替えは用意していましたが、車中泊の用意はしていなかったのでしばらく話し合った結果、温泉施設もあるし、9月末でも日中30℃近くまで気温も上がっていたので、朝晩の気温もそれほど下がらないだろうから車中泊にチャレンジしてみよう!となりました。


人生初めての車中泊です。そうと決まればお腹が減りました。

温泉施設内にはレストランもあって夜の営業が17:00~だったので、モールトンをサイクルヒッチメンバーに乗せたり、温泉施設横にあるコンビニ風のお土産屋さんで必要なものを買って準備万端です。


17:00

開店早々にレストランで食事をして温泉へ。

ここの露天風呂、絶景です。満点の星空が見えますよ。

ちなみに温泉の入浴受付時間は 20:00まで(営業時間20:30)、コンビニは7:00~20:00の営業です。


20:00

ジムニーの背もたれを最大まで倒して、クッションを枕に予備のバスタオルを肌掛けにして寝ました。


0:00

やはり中途半端な車中泊だったので朝まで寝続けるのは難しかったですね。パチっと目が覚めたのですが、こんな時間に出発するなんて考えてもなかったので、目が覚めたのに二度寝してみたり、うだうだと過ごしていたのですが、思いのほか二人とも疲れが取れていたので、朝の渋滞も避けられるだろうからと、真っ暗闇の深夜でしたが出発することにしました。


2:30

道の駅 おくとろを出発。

こんな夜中に走っているクルマは私たちだけでした。

山間部の街灯も信号も無い道をしばらく走るため、野性の鹿に何頭も出会いました。ほとんどが2頭で行動していましたが夜は人里まで下りてくるのでしょうね。少し離れたところから並走してきたりと夜のサファリパークみたいでした。野ウサギなんかもピョンヒョンピョーンと横切ってくるのでスピードも出せません。滅多にない楽しいドライブでした。


4:00 

帰りは三重県の尾鷲ICを使いました。高速に乗る前にガソリンを補給して、コンビニに寄っておにぎりとお味噌汁で軽い朝食をとりました。

サイクリングをした日は本当にお腹が減るのが早いです。


日の出も過ぎた頃、高速は道こそ空いていましたが、サービスエリアはどこも満車で渋滞。おにぎり食べてトイレ休憩しておいて良かった...。


7:30

京都に帰ってきました。

これまたお腹が減ったのでふと思い立って、帰り際に西京極にある小川珈琲本店でモーニングを食べることにしました。


いつもと違う感覚で贅沢な気分です。

巨岩のご神体に断崖絶壁の岩山、人生初のなんちゃって車中泊、盛り沢山のサイクリングを振り返って楽しい時間でした。

ちなみにこちらの全粒粉パンのトーストモーニング、小川珈琲堺町錦店で焼かれているパンなんですが冷めても美味しいんです。


9:00

ようやく西京極本店に到着。

新鮮な気持ちで朝を迎えられました。



 8月にもジムニー にモールトンを積んで、紀伊山地にある奈良県十津川村の “ 果無集落 ”を走って、その翌月も紀伊山地をサイクリングしてきたのですが、1年前に輪行で訪れた奈良県吉野村を走ったのがキッカケで、紀伊山地の神々しさと山々の深さに魅了され続けています。


今回の移動時間はクルマで約4時間半。 

果無集落へ行った時と同じぐらいの所要時間です。

無理はせず道中にある道の駅で休憩しながらでしたが、近くて遠い紀伊山地には神秘的で魅力的な地域がたくさんありますね。


九十九折りの細い林道は、山の中腹までは潤沢な川の音だったり、岩肌を伝う小さな滝の音など自然の躍動感ある音が、高度が上がるにつれて静寂な雰囲気に変わって、時折聴こえてくるのは林道脇にちょろちょろと流れ出てくる山の水音。林道の端には自然にできた鮮やかな苔の絨毯、ゆっくりと流れる景色に心も落ち着き、しんどいはずの上りもリズムを付けながら楽しんでいました。野生の鹿にも遭遇でき時が止まったような瞬間もあって、自然が凄く近くに感じられる素敵な山でした。山深い場所であってもこうやって自転車で走ることのできる整備された道があることに感謝です。


改めて自転車が素晴らしいと感じるのは、今回のような細い山道の場合、本当に自転車が適してるということ。特に今回走った林道はガードレールのない細い舗装路が続いていたのでクルマだと神経を使うと思いますし、バイクだとしても静寂の中から聴こえるあの自然の音色が感じられないというのは凄く勿体ないなぁと思ってしまいます。はたまたトレッキング となると上りも下りも同じぐらいの時間を要すると考えると時間的な余裕が持てないと難しいと思うので、忙しい合間の気分転換には自転車がぴったりだと改めて思いました。また自分の足でここまでこれたという感動も大きいので、強く印象に残ります。


人生初の車中泊にもチャレンジしたりと、ジムニーに乗り換えてからクルマの使い方がどんどん変化していっています。遠出のサイクリングのハードルも下がって行動にも移しやすくなってきました。これまではクルマというとドライブを楽しむ要素が大きかったのですが、ジムニーは道具としても使えているような気がします。この感覚は今までで初めてです。

室内が狭いジムニーでもクルマの背面にモールトンを積んで安心して移動できると実際にやって分かったので、これまでなら考えもしなかった車中泊をしてみようと思えました。

また数時間クルマで寝て、夜中に移動するのも有りだなと思いました。2+4Styleの新しい発見ができましたし、クルマのルーフをもっと活用すれば訪れる地域ももっともっと広がっていきそうです。クルマと輪行を上手く利用すれば、どこへでもサイクリングに行けますね。


クルマは目的地まで便利に行けるので、個人的には ”旅” という感覚はあまり持てませんが、鉄道を使った2人での輪行旅は、クルマよりもどうしてもコストが掛かるので頻繁には行けなくて妄想ばかりが膨らんでいますが、鉄道は ”旅” という感覚があるので、輪行旅は贅沢だなぁといつも感じます。

鉄道の待ち時間や乗り換えがあったりして、クルマに比べると自由度は低いですが、この少しの不自由さに旅の醍醐味を感じています。輪行は荷物の制限も大きいので、着替えの準備が必要になる夏は避けていますが、気温が下がってくると輪行がしたくなってきますね。


それもこれもモールトンという自転車が一緒だからであって、モールトンだからこそ色んなところに行きたいという気持ちが湧いてくるのだと思います。その理由はたくさんあります。数えきれないぐらいです。

今回のサイクリングでも、日本の素晴らしい風土や自然を体感することができて、ますます紀伊山地を見て知りたいと感じました。

目から耳から、からだ全体が癒されたサイクリングでした。