2022-07-09

Moulton AM-7 レストア(1984y)

英国モールトン社での購入履歴やメンテナンス書類が揃っている
希少なフルオリジナルのAM-7。


レストアに向けて分解していきます。
全塗装も含めたフルレストアで、
スレッドステムからウィッシュボーンステムの交換も行います。
作業順序は分解→塗装剥離→腐食ロウ埋め→ヘッドチューブ加工→塗装完成です。

ボトムブラケットは、made in franceのストロングライト製ですね。

取外したコンポーネント。

次は、フロントフォーク分解、リアピボットブッシュなどを取り外していきます。

分解後のフレーム一式。

左)フレーム分割部のキングピンパーツ。
右)ヘッドバッジも取り外します。

フレームについては塗装下から錆がいろんな箇所で出ています。

塗装を剥がす準備をしていきます。




塗装は剥離剤を使っても、なかなか剥がせません。
さすがに約40年前だと苦労も多いです。

ある程度、全体の塗装が剥がせたら、
次はサンドブラストで剥離しきれなかった細かい箇所(トラスの隙間など)の
塗装も落としていきます。

ひとまず塗装が剥がせました。
40年間の錆はこんな感じですね。
隅々まで錆を落とし、綺麗な素地になりました。

今回は目視でも塗装の下から錆が浮いてきているのが確認されたため、
このように錆が多く発生している場合は、
 塗装を剥がして錆による腐食の程度を自分の目で確認しておきたいので、
剥離作業もMoku2+4本店の工房で行います。

塗装屋さんに外注に出せば、塗装の下準備のために
錆で腐食しているところの凹凸をパテでなだらかに整えることが多いと思います。

パテ修正でもほぼ問題ないと思いますが、
モールトンのフレーム部材は特殊で、肉厚の薄いパイプの集合体なため、
デリケートな素材の強度を少しでも確保したいので、
腐食による凹凸はパテではなく、なるべくロウ付けをして修正します。

そういう理由からここまでの作業をMoku2+4本店の工房で内製しています。

自動車ボディ修理も、昔は板金ハンダという作業がありましたが、
手間がかかりすぎるので、現在はパテが主流です。
ただ、旧車のレストアでは今でも板金ハンダ等を使って修正されていることも
多いと思います。

サンドブラストをして、素地が綺麗になったため腐食が分かりにくいですが、
一つ一つ腐食の度合いを確認していきます。

腐食部分をロウ付けしますが、熱による母材への影響を少なくするために
低温ロウ付けが可能な銀ロウを使います。

ロウ付けした後は、フラックスを落として鉄ヤスリで滑からにしていきます。
パテに比べて工程が多く、手間がとても掛かります。

腐食の修正を終えると、次はウイッシュボーンステムを取り付けるための
カスタマイズ作業です。

AM-7のヘッドバッジは、ヘッドチューブ上方にあるため、
ヘッドチューブをカットすると、ヘッドバッジを止めているリベット穴が無くなるため、
穴を開け直す作業が必要になります。

ヘッドバッジがヘッドチューブの中心に取り付けられるように、
ヘッドチューブの中心線を罫書いて(けがいて)印をつけておきます。


ヘッドバッジの元穴は使わないため、ロウで埋めます。

ロウで埋めた後は、フラックスを落としヤスリで整えます。

ヤスリで整えた後。

外側の穴は整えましたが、内側も整えなければなりません。
この状態だとヘッドセットの種類によっては、ヘッドワンが圧入できない可能もあります。

ヘッドチューブ内をリーマー掛けをして、整えました。

リアキャリア取付用の差し込みプラグの長さが左右違ったので修正します。

ステンレスの無垢から、プラグを削りだします。

削り出したプラグを銀ロウ付けします。

錆び取りなどのフレームの下処理作業後、再塗装から戻ってきました。
色は、クラシック・ミニのブルックランズ・グリーンです。


組み立てについても、細かな作業を積み重ねていきます。
組み立て作業の画像をポイントで撮影しました。
ピボットのリーマー掛け、ボトムブラケットのフェイスカット、
クランクアームのチェーンリング取付穴が少し合わなかったので、リューターで削ります。

フルレストアの完成です。
クラシック・ミニのブルックランズ・グリーンに再塗装されました。
コンポーネントは約30年前の新品 シマノ DURA-ACE 7400 の8速です。

AM-7オリジナルのシフトマウントは生かしました。

AM-7 オリジナルのロングヘッドチューブから、
モールトン純正ウイッシュボーンステムにカスタマイズ。

DURA-ACE 7400 リアディレイラー。
エッジの効いたデザインがカッコいいです。

前後ハブもDURA-ACE 7400 

左)クランクセットはポリッシュ仕上げが美しいmade in franceのTA製。
右)ペダルはmade in japanのMKS製

ブレーキレバーは、グレーアルマイトとメッキが美しい7400。

ブレーキキャリパーは、
Moku2+4オリジナルでショートリーチアダプターをワンオフで製作して取り付けました。

アルミ大型ロックリングはブラックアルマイト仕様にカスタマイズして取り付け。

モールトン刻印入り日東製ステンレスドリンクケージ。

サドルはBROOKS B-17のHoney。

納車当日。
クラシック・ミニにも乗られているオーナーさんと記念撮影しました。