2016-10-01

Alex Moulton Single Pylon (新型バージョン/特注分割フレーム)

ご注文いただいた特注仕様のシングルパイロンです。
通常、シングルパイロンは分割できない非分割フレームですが、
ダブルパイロンと同じパーツを使い、分割フレーム仕様になっています。

フロントフォーク廻りは、今まで画像(上)のようにフォーク足がフレクシターの内側に付いていましたが、今回のシングルパイロンは、赤色のダブルパイロン(左)と同じ仕様になっていて、フレクシターの外側にフォーク足が付いたデザインにリファインされています。

バッファー(緩衝装置)の位置については、ダブルパイロンとも異なります。
左)リファインされたシングルパイロンのバッファーは上側に付いていて、下側の調整ネジで、沈み込んだ時の深さが調整できる機構が付いています。
右)今までのダブルパイロンは、バッファーが下側に付いていました。

メインコンポーネントはCampagnolo Recordで、
クランクセットのみセラミックベアリング搭載のSuper Record。


付属されていたアヘッドステム(左)をスレッド仕様(右)に加工。

バーテープはBROOKS カンビウム。

ブレーキキャリパー(Campagnolo ATHENA)とホイールハブ(White Industries)は、
ステンレス素地に合わせて、ポリッシュ仕様をチョイス。

シートポストは仕上げが美しい イタリア製「PMP」のチタン。

                                               ーー組み立て編ーー


今回からリファインされているリアピボット。

今までリアピボットブッシュは、ゴムのトーション(捩れ)を使ったフレクシタースプリングだったのですが、リファインされたブッシュは「ソリッドブッシュ」+「ゴムのOリング」。

ゴムのOリングは要らないような気もしたのですが、
どうもこのOリングがミソになっていそうです。

ソリッドブッシュを抵抗なくスムーズに動かすために、通常よりほんの少しだけクリアランスを多く設け、そこから発生する左右の動きをこのOリングで抑えようとしている感じです。

ピボットにフレクシターを採用しているモデルについては、クランクの形状によって、クランクとピボット周辺が干渉することがあったので、おそらくそれを避けるためにピボット幅を狭くしたのではないかと思われます。

グリスアップし終えた状態でリアフォークを上下に動かしてみると、
う〜ん・・・なるほど、
フレクシターに近い動きをしていました。

この構造だと、フレクシターと同等の動きをしているので簡素化できるでしょうね。

モールトン博士が亡き今、少しでもブラッシュアップできるように、こういう試行錯誤は大切だと思います。

左側が今まで使われていたフレクシタースプリング、
右側がリファインされたスピンドル。
分割パーツのキングピンを取り外して点検、そしてフレーム側のエッジを研磨します。

キングピンを固定しているネジを見ると、あれ?ここのネジはイモネジでなかったような気がする・・・と思いつつ、ネジを回すと初めから緩んでいました。
ん?何かおかしいなと感じて、今度はネジを締め込むと、キングピンが動かなくなりました。

イモネジだとボルトにフランジ(つば)がないため、奥まで入り過ぎてしまうんですね。
なので、ここの固定ネジはイモネジではなくて、普通のボルトにしないとダメですね。

という事で、普通の六角ボルトを右のイモネジの先端のように加工します。

なぜ、イモネジの先端がこのような形状になっているかというと、ひとつ前の画像で確認できますが、キングピンには一本の“割り”が切り込まれています。その“割り”がフレームを分割する際に、キングピンボルトを回した事によって供回りしなように、ボルトの先端を画像右側のイモネジのように加工しているんですね。
なので、交換するにしても同じように加工しなければいけません。

旋盤でボルトを削っていきます。

六角ボルトを右のように加工しました。
先端だけでなく、フランジもテーパーにして目立たないようにしました。
こんな感じで加工すると同じボルトには見えませんが、
画像左側のボルトが加工前のものです。
取り付けました。
ちなみに画像は17インチシリーズなどのキングピンですが、供回りを防ぐために細い棒を取付けてあります。
パイロンシリーズはモールトンのフラッグシップモデルなので、凝った作りになっているという事ですね。
モールトンってサスペンションがあってのモールトンですが、サスペンション以外のこのような細かい発想もほんとずばらしい!です。
英国からは、ヘッドベアリングとフロントフォークが組まれた状態で納品されるのでフロントフォークを分解していきます。

下処理はされていないので、ヘッドセットを取り外して、リーマー掛けをします。

左)ダブルパイロンやシングルパイロン、ニューシリーズは、今までスレッドフォーク仕
様だったのですが、リファインされた今回のパイロンからアヘッド仕様に変更になっていました。
見た目がシンプルなスレッド仕様でご注文いただいたので、スレッド仕様に加工します。
右)スレッド仕様に加工にするため、フォークコラムを適正な長さに切断します。

フォークコラムにネジ加工を施して、さらにステムが入るように内径を少しづつ加工します。
このウィッシュボーンステムのコラムは、アヘッド仕様のコラムなので、内径がスレッドコラムの径に合っていなくても問題ありませんが、アヘッド仕様のコラムをスレッドにする場合は、内側にリーマーを掛けてコラム径を合わせないと硬くて入りにくいため、このような処理をします。

スレッド仕様になりました。

フォークを組み立てながら、エッジが立っているところは研磨しておきます。
ボトムブラケットハンガーの下処理をして、
フレームアライメントの点検と修正。

左)アライメント確認後、少しだけリアエンドを削りました。
右)シートチューブのリーマー掛けをします。

アライメント点検時にシートチューブのリーマー掛けをしていますが、シートポストを入れるととても硬かったので、現物のサイズに合わせながら再びリーマーで1/100単位で細かく削っていきます。

コンポーネントを取り付けながら、取り付けにくいところは現物合わせで加工したり、製作します。
今回のシングルパイロンでは、ブレーキ取り付け用のアダプターを旋盤で製作しました。