2012-02-04

Alex Moulton New Series (Red) オーバーホール&再塗装。#5

AM-New Series のオーバーホール&再塗装の最終回です。
Part.1 、Part.2Part.3Part.4
フレームのオーバーホールが完了したので、最後はパーツのオーバーホールです。フレームを再塗装に出している間に準備していた部品です。リアディレイラーを出来るところまで分解して洗浄し、グリスアップします。

ブレーキもこの通りバラバラです。ここまで分解してやっとブレーキのオーバーホールと言えるんじゃないかなぁと思っています。
クルマのレストアやオーバーホールというと、部品点数も自転車に比べて圧倒的に多いですし、電気系統などの専門知識も必要になるので大変な作業だろうなと想像しやすいですが、自転車は部品点数が少ないからか、その作業内容がすごく曖昧ですね。でも自転車もクルマと同様にメンテナンスやオーバーホール、レストアと同じ表現を使います。


メンテナンス:『維持・保守』正常な状態を維持できるように手入れすること。


オーバーホール:徹底的に『分解、洗浄、点検修理』すること。


レストア:『再生・復元』痛んだものを新品同様に復元すること。


とそれぞれ作業内容が結構違います。
まずは、ワイヤーケーブルなどの消耗頻度の高いパーツを交換する『メンテナンス』を繰り返して、走行距離が増えていくに連れて汚れもヒドくなってグリスも流れていくので、洗浄してグリスアップする『オーバーホール』をして、どうしようも無いぐらいヘトヘトになってしまったら『レストア』して復元する。


こういった作業の流れがベストな自転車との付き合い方なんですが、パーツクリーナーで簡単に汚れを落としてグリスアップするだけでオーバーホールと表現することもあるようです。この辺りの表現が自転車は全体的に曖昧なんですね。Classic Miniのメカニックをしていたからかもしれませんが、クルマと自転車の作業についての捉え方に若干ズレがあるような気がします。

画像左)オーバーホール前。  画像右)オーバーホール後。



New Series純正フロントハブも分解します。

画像左)ベアリングも錆が出てきていました。
画像右)新しいベアリングに交換し、組み立ててベアリングの回転を確認していると、ベアリングを少し強く押すと左右にガタがあったので、もう一度分解して各部を測定。

フロントハブとハブシャフトの寸法に誤差があったので旋盤で加工しました。基本的にはこのような誤差があってはいけないのですが、「まぁ、Moultonなんでね・・・」と特別驚く事もなく変に納得している自分です…。

リムにもブレーキシューのカス(ゴミ)が付着しているので、専用のゴムヤスリで面を整えます。 画像左)リムを磨く前。 画像右)磨いた後。

やっと殆どの作業が出来ました。
残すところはワイヤーケーブルを張り直して、ブレーキと変速を調整して、バーテープを巻いてと、最後段階の変速調整していると、急にフロントのケーブルが外れたような感覚があったので「ケーブルの固定ボルトをまだ確実に締めてなかったしな」と軽く思って確認すると「えぇ?!?! ケーブル受け外れてるやん!」。 一瞬頭がおかしくなりそうでしたが現実を受け入れて、気持ちも入れ替えて、でも少しの間呆然として…。
ここで頭をよぎったのは「完成間近の状態でロウ付けって! 」でした。
ここはさすがに「Moultonなんでね…仕方ないわ…」とはいきませんでした。

頭を切り替えて作業開始。
画像左)元のロウを綺麗に取り除きます。
画像右)元の位置に『アウターケーブル受け』を銀ロウ付けしたところ。

フラックス(白い物体)を取り除いた後(画像左)に、表面を整えます(画像右)。

画像左)Moultonは、ステンレスフレームを綺麗にポリッシュしているので、同じく磨きました。画像右)これで元通り。外れる前のロウ付けよりも綺麗に出来たかも…?

これでやっと完成です。このNew Seriesは当店で販売したものではありませんでしたが、オーバーホールというよりはレストアに近かっかたかもしれませんね。ひとつひとつのパーツ、フレームをオーバーホールしながら全てを組み直したので、Moultonのしなやかな乗り心地になりました。完全復活です。
今までの作業行程をまとめてMokuのサイトへアップしました。こちら>>>