1993年に発表されたAPB-14の作業事例です。
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フロントバッジがゴールドです。 |
モールトン博士の直筆のサイン。
皇居で行われたモールトンミーティングでモールトン博士直々にサインをしていただいたそうです。フレームが分割できるのでヘッドチューブとシートチューブにもサインが。
電動変速 SRAM eTAPのシフターはこんな感じに取り付けました。 |
ブレーキレバーはプロファイル・デザインのTT ブレーキ用。 ステムと同じメーカーに合わせました。 |
オーバーホールと同時に駆動系のハブもアップグレードされました。 APBのエンド幅は元々135mmなので、MTB用135mm幅のホイールを履かれていましたが、ロード用130mmハブに変更されたので135mmから130mm幅に出来る範囲で近づけるようリアエンドをアライメント定盤で修正します。 AMシリーズでは、採用されている材質の関係で135mmから130mmまでの5mm前後を修正するのは難しいですが、APBとTSRはパイプの特性上まだ修正しやすいです。 エンド幅135mmのAPBやTSRにロードハブ(130mm)を組み合わせている事例を度々見かけますが、エンドの修正をせずに取り付けた場合はフレームの中心にホイールが収まることはほぼ無いかもしれません。エンド修正をしなくても装着も走行も出来ますが、まっすぐ気持ちよく走る感覚は得られないと思います。 フレームの中心にホイールが装着されていること自体が当たり前のように思われるかもしれませんが、モールトンに関して言うとそうでない場合がほとんどです。 なぜなら、モールトンはフレームの接合部(ロウ付け部)が多い「トラス構造」を採用していることからフレームの強度は高いですが、その分歪みも出やすい構造のためAMシリーズであっても歪みはあります。高価だから歪んでいないという訳ではなく、製造する上で歪みは避けられないと考えていただければと思います。 2007年に英国へ訪問した際にモールトン博士と車や自転車のアライメントついて話しましたが、走る上でアライメント調整は重要だと博士も言われていました。 モールトンをここまで点検するのは、モールトンバイシクルの最終ラインだという気持ちで作業しています。 |
リアエンド幅だけをいたずらに130mmに修正しても、
左右のリアエンドがズレていては意味がありません。ここの点検も重要です(画像右)。
以前行ったオーバーホール時にアライメントは全て調整していますが、フロントフォークのオーバーホール後も念のためアライメント点検しておきました。
一度アライメント修正を行えばズレは出ないので(衝突などは除く)今回も出ていません。
以前、別のお客様が話されていたのですが、
「モールトンってどの年代のパーツを合わせても良い感じに仕上がりますよね。現行のモールトンに年代物のパーツを合わせても、逆に数十年前のモールトンに最新パーツを合わせても、どれも良い感じ。なんでも受け入れてくれる包容力がありますよね。
一台で如何様にも変化できる自転車ってそうそう無いと思います。
ライフスタイルの変化や年齢など長い期間自転車と接していくとその時々のテンションで自転車との付き合い方も変わっていくと思います。パーツの供給もそうですね。今回の事例のように無線の電動変速が発売されたからモールトンにも取り付け出来るようになって選択肢が増えていく。逆もまた然りですが。
年齢が重ねるにつれ、スピード云々より、ゆっくりのんびり自転車を楽しみたいと相談されることも増えてきました。ポジションのことであったり、変速の煩わしさから解放されたいなど様々です。
ドロップハンドルからモスキートハンドル、またはフラットハンドルやマルチハンドルなどアップライトポジションへの変更や、リアスプロケットのワイド化がどんどん進んでいるので、リアだけでもワイドシフトに設定できるので、フロントギアをシングルにしてギアレシオ(歯車比)をシンプルに、変速の煩わしさから解放される提案もできるようになりました。
私自身もモールトンで通勤するようになってから、ライフスタイルが変化したことでモールトンとの接し方が変わってきました。第一の必須条件が大量の荷物が載せらることになりましたから。そこから派生してグラベル仕様のモールトンが出来上がったりして、他のカテゴリーの自転車で実現するのではなくて、どんなシチュエーションでもモールトンで走りたいと以前よりも強く思うようにもなりました。
今回のご依頼主は、20数年前に初めてのボーナスでこのモールトンを他店で購入されたそうですが、いざ乗ってみると何も感動もなく「買って失敗したかな?」と感じられたそうです。
今回のカスタマイズ後も、電動変速の楽しさに感激されていました。
一台でも多くの方に楽しいモールトンライフを送っていただきたいと思いますね。