2017-07-29

Moulton TSR Dynavector Limited / コンフォートツーリング仕様

BROMPTON歴11年目の77歳オーナーが選んだセカンドバイクをご紹介します。

実はこちらのオーナー、義理の父でして、
基本インドア派なんですが、10速にカスタムしたBROMPTONで
年に1〜2回、一緒に50〜80kmのツーリングイベントに参加していて、
普段も週に数回(10〜25km程度)、移動手段としてBROMPTONを活用しています。

今まで「BROMPTON一筋」といった感じだったので、
お義父さんにはBROMPTONが使いやすいんだろうなぁ、
モールトンは違うんだろうなぁと若干諦めていたんですが、
この秋に近畿圏内で100kmツーリングが開催されるのを見つけたので、
「100kmツーリングにモールトンで挑戦してみない?」
と持ちかけたのが購入するキッカケとなった感じです。

結構前から「モールトンでロングライドに参加してみない?」と誘っていたんですが、
「BROMPTONがあるから大丈夫」で話が終わってたんですよね。
お義父さん自身も100kmには挑戦してみたいけど、
さすがにBROMPTONでは厳しいと感じていたようです。

車歴は、BROMPTONと一般車のママチャリだけなので、
カスタムの内容は予算を設定した上で、すべて任せてもらいました。
前傾姿勢も外装ギアの操作にも慣れていないので、
とにかくポジションをBROMPTONに近づけて、
操作も簡単に負担なく乗れるように吟味してパーツのセレクトをしました。

左)脚に大きな負荷が掛からないようにフロントのギヤ比はとっても軽い46-36Tに。
右)46T-36Tのダブル変速を可能にするには、フロントディレイラーの位置を下げる必要がありますが、市販のアダプターを使っても最適な位置に取り付けできなかったため、ワンオフでアダプターを製作。

左)ホイールハブはシマノ DURA-ACE。
駆動系のハブは脚の負担軽減に繋がる重要なパーツなので、最上級モデルを選びました。
右)ハブの質感に合わせて、リアディレイラーはシルバーに。

アップライトから少しの前傾まで、いろんなポジションが取れるマルチハンドル。
ステムコラムより手前にブレーキとシフトレバーが配置できるので、
このハンドルを選びました。
このハンドルで、ほぼBROMPTONと同じポジションが可能です。

マルチなハンドルをさらにマルチにするため、
Moulton APB純正のアジャスタブルステムを選びました。

ステムの角度調整ができるので、
乗り馴れてきたら前傾にすることも可能です。

ブレーキレバーとシフトレバーは磨きが綺麗なシルバーを。

あると便利なMoku2+4 オリジナルアルミマッドガード。
フレームのお掃除も断然楽ちんです。
雨の日だけじゃなく、晴れの日の砂埃対策にも有効です。

さらにあると便利なMoulton純正ラージバッグとラージキャリア。
簡単に脱着できる優れもの。
バッグは英国製のキャラダイス。頑丈な作りです。

まだまだ仕事も現役で、
打ち合わせ場所までBROMPTONを使うことも多く、
いつもBagは書類でいっぱいでした。
それもあって、モールトンにもリアバッグを付けたり、泥よけを付けたり、
普段のシティーユースにもツーリングにも使いやすい
コンフォート仕様に仕上げました。

ラージバッグには仕事関係のいろんな物が入る予定なので、
安定感のあるダブルスタンドを取り付けました。

アルミ削り出しのスタンド台座は、Moku2+4オリジナルです。
サドルは、BROOKS B-17 STD。
コンフォート仕様にピッタリのロングセラーモデル。
フロントライトにはCAT EYE Volt300。
BROMPTONで同じライトを使っているので、
CAT EYEのブラケットだけを取り付けて、ライト本体を毎回付け替える仕様にしました。

ブラケットに付属しているステーを使う予定でしたが、
ステーのパイプ径が少し厚いためにブレーキと共締めする際にネジ山の“かかり”が浅くなり、取り付け剛性が下がりそうなのでCAT EYEではない別のパーツを組み合わせました。

納車当日のお義父さん。
試走がてら、嵐山までひとっ走り。



BROMPTONで長距離を走るのは少し大変かもなと思っていたので、
ドロップハンドルの自転車にも試乗してもらったこともありますが、
乗り馴れていないためにふらついたり、落車してしまいそうな感じがしたので、
それ以来、ドロップハンドルを勧めることをしていませんでした。
70歳を超えてから初めてドロップハンドルの自転車に乗るのは
少しハードルが高いような気もします。

私がお義父さんにモールトンを勧めるのは当たり前の流れのようですが、
それには理由があります。
一番は、モールトン博士がよく言っていた「ユニセックス」というワード。

乗り降りし易いモールトンのデザインは
「オープンフレーム」と呼ばれていますが、
老若男女問わず、一つのフレームで
小柄な方から身長190cmぐらいまで対応できることから、
モールトン博士が「ユニセックス」と表現していました。
モールトン自転車の特徴でもあります。

これだけの身長差を一つのフレームでカバー出来る自転車は、そうそうありません。
専用設計のハンドルステムがポイントになるんですが、
このステムのチョイスで、身長差もアップライトなポジションも
様々なセッティングが可能なっています。

また、70歳以上のお客さんと接していると、
ロードバイクを跨ぐ際に、サドル後方から脚を上げるのが大変そうなんですね。
股関節の柔軟性が低下していることから、
片足立ちで腰の位置まで脚を上げた時に
「おっとっと」とふらつかれる方が多いんです。
そのままバランスを崩して自転車と一緒に転倒してしまうなんてことも考えられます。
高齢であっても普段からロードバイクに乗り馴れていればまた別かもしれませんが、
そうでない方には少し危いような気もします。
その点、モールトンはサドル前方から脚が抜けるので、
股関節の柔軟性が落ちている方でも安心して乗り降りが可能です。
実際にモールトン博士も「モールトンは後ろからじゃなくて、前から脚を抜くんだよ」
とおっしゃってましたからね。

次の理由は「サスペンション」です。
以前、モールトンではない別の自転車に乗る74歳のお客さんと話していると、
少し距離を伸ばすと手に伝わる振動で体全体が疲れてしまう。
と言われていました。
その点、モールトンは前後のサスペンションで体の疲労を大きく軽減してくれます。
筋肉は体のクッションですが、それが低下すると体の負担も大きくなります。
また、翌日の疲労にも差が出るので、
体への負担も少なく、長距離を楽しめるのがモールトン自転車です。

そしてもうひとつの特徴「安定感」です。
多くの荷物を載せられる上に、荷物を載せても安定感が損なわれません。
荷物を載せることを前提にフレームがデザインされているのも隠れた特徴のひとつです。
これについては、私が毎日体感していますが、
ほんと!ここ!もっとアピールすべきだよ!と常に思っています。
もう、これは使ってみないとわからない部分なんですが、
それぐらい、モールトンが持っている積載能力の高さに毎回圧倒させられます。


モールトン博士の言葉モールトンバイシクルはeverything」

通勤からロングライド、荷物を積んだツーリングまで。
まさにそのとおりだと思います。
何にでも対応できるのがモールトン自転車です。



これまでは、『なぜお義父さんにモールトンを勧めたのか』でしたが、
ここからは、今回のカスタムについて書いていきます。

今回はギヤ比から乗車姿勢など、いかにして体に負担なく楽しめるかを考えました。
「やさしいモールトン」がテーマでした。


でも毎回毎回そうなんですが、完成してしまうとあっさりですが、

完成するまで一つ一つ向き合ってしまうので、なかなか大変です。


納車当日まで車両を確認してもらう機会がなかったので、
操作性やポジションに関して、不安要素がいくつかありました。

1)外装のフロントギアが上手く操作できるか
BROMPTONでは主に内装を操作していたのと、
急な上りで結構な負荷を掛けてギアチェンジする癖があったので、
内装ギアの消耗も大きく、同じようにギアチェンジするかもしれない。

2)ポジション
ハンドルステムも決して高級パーツを使っているわけでは無いですが、
これぐらいの姿勢だったらBROMPTONと同じように

違和感無く乗ってもらえるだろうか。
シフトレバー、ブレーキレバーの操作位置に問題ないか。

3)軽すぎるギア設定
どちらかというと重ためのギアで漕ぐタイプなので、
軽すぎると感じないか。
その上、登りになるといつも大変そうなので、軽いギヤ設定にしましたが、
フロントディレイラーを引くインナーケーブルの角度がキツくなるため、
シフト操作が重たくなったりするので少し削ってみたり、
フロントディレイラーとチェーンリングも、どの歯数がベストか、
数種類の歯数を何度も付け替えて操作感を確認しに試乗を繰り返しました。

いろいろここまで長々と書き綴りましたが、
試走後のお義父さんの感想は
「よく進むね。走りやすいね。うんうん、これなら大丈夫。」
でした。

いつもは雄弁なお義父さんですが、
こういう時は私を気遣ってかあまり多くは話さない感じです。

80歳目前、仕事も現役のお義父さんですが、
もう無理かなーとか、あと何年乗れるかなー、
というような考えは持っていないようで、
楽しめるのであれば新しい事もしてみたい。
という性格なので、このモールトンでまだまだ自転車を楽しんで貰えそうです。
博士の歳を超えても、モールトンに乗っていてほしいなーという私の勝手な願望です。

これからは、モールトンとBROMPTONを使い分けて
いろいろと出掛けたいと話していたので安心しました。
ほんと良かったぁ。



ここからは組み立て内容をご紹介。
まずは、フレームを分解して。
ロードバイクのハブを使うので純正のエンド幅135mmから130mmに修正します。
フレーム修正という言葉はよく耳にしますが、
どのように修正したかがとても重要です。

ただ単にフレームエンド幅を狭くするだけでなく、
フレーム中心ラインからホイール中心がズレないようにしなければなりません。

フロントフォークの修正。
このアライメント修正は、
フロントフォークのホイール中心位置がズレないように修正するのと同時に
サスペンションを滑らかに動かす効果もあります。

画像はここまでですが、いつも通りのフレーム調整の工程を経て、
パーツを組み付けて完成です。