2012-12-26

TSR 再組み立て依頼 #2

TSR組み立て依頼の続きです。(#1はこちら

左)リアフォークを取り外すと、ピボットスピンドルがフレーム幅より結構突き出ていました。この場合、リアフォークの上下の動きはとても軽いでしょうが、このままではすぐにガタが発生してしまいます。
右)フレーム幅より、ほんの少し突き出るぐらいに(今回は0.07mmぐらい)旋盤で加工しました。

リアフォークを取付けて、動きを確認。
フレームアライメントの確認をする前に、リアエンド幅など現状を確認しておきます。

TSRの純正ハブ幅は135mm。
今回依頼されたTSRは、ハブ幅130mmのロード用完組ホイールに改造されていました。
が、リアエンド幅が134mmでした。

この場合、純正135mm幅に合った完組ホイールを選ぶ、
もしくはロード用完組ホイールの130mmにリアエンド幅を修正する、
そのどちらかです。
今回は、Campagnlo RECORDのハブに交換されるので
リアエンド幅を130mmに修正しました。

134mmのままでもクイックシャフトでホイールを固定することは出来ますが、
このままでは左右どちらかにホイールがズレてしまう上に、
リアエンドが歪みやすいでしょうね。

性能の良いホイールに交換すると、良く転がっているように感じますが、
フレームを筆頭にそれぞれの精度が出ていない(アライメントが出ていない)場合は、
どこかしこで抵抗が発生している状態なので、一部であるとはいえ、
性能の良いホイールに交換すると、回転抵抗が軽減されるため、
良く転がっていると感じやすくなっていると思います。

「良く転がる」という表現には色んな意味や定義があるので何とも言えませんが、
自転車全体の性能は置いといて、ホイールの性能で目隠ししてしまっているのは
考え方の順序が逆になっているなと思います。
優れたパーツの性能が注目されるのは良いことですが、
単体で動く物ではないのに、その一部品だけがクローズアップされてしまうと
深く読み取れなくなりそうです。
それもこれも、製作時にフレームの精度を上げることが一番望ましいと思いますね。

自動車のエンジンも同じような事が言えて、
オーバーホールやチューンナップをする際、
ピストンやクランクシャフト、フライホイールなどに
軽量で高品質のパーツが使われることがありますが、
お店によってはエンジンの下処理をあまりせずに
高品質のパーツばかりを取り付けるところもあります。
そのようなエンジンでも組み付け後の効果は体感できると思いますが、
もしかすると既存のパーツの精度(個々の重量差など)を上げて
きっちりと組み上げたエンジンと大差がない可能性もあります。

下処理というのは本当に手間が掛かります。
手間ひま掛かる下処理は、目に見えないところが多いので
部品を交換するのと比べると、分かりくく体感もしにくいでしょうね。
今の時代は高効率・高収益が優先されいると思うので、
高品質のパーツを多く取り付けてパーツで収益を出して手間を省いていく
という事でしょうね。
まぁそのほうが簡単ですからね。
今の時代と比べて昔のほうが物としては手間が掛かっていたんだな〜と良く感じます。

ちょっと固い事を書いてしまったので、サッと流して次に。

錠盤でアライメントを修正します。
こちらのTSRからは話が外れますが、アライメント修正などについて少し…。

競輪など競技自転車の場合は、ぶつかったり落車するのが日常茶飯事で、
フレームも歪んだりする事があるので、修正できそうであればフレームを修正します。
そうでなければ毎回歪む度にフレームを作り替えないといけなくなるので、
修正というのは一般的な作業なんですね。

自動車の場合も修正作業は決して特殊な作業ではありません。
Classic Miniの話で言うと10万キロ走行すれば、
そろそろエンジンのオーバーホールかなと考える時期です。
エンジンをオーバーホールする際に、
エンジンで基礎となるクランクシャフトというパーツの曲がり点検をして、
修正が必要であればプレスなどで圧力をかけながら曲がりを修正します。
経年による歪みは出てくるので、自動車の世界でも修正する事はごく普通の作業です。
要はどこまで修正するかのさじ加減は、作業する方の判断によりますね。

リアエンド幅を修正後の確認作業です。

以前にフロントフォークをぶつけて交換しているので、ヘッドチューブの芯も点検します。

フレームのアライメント点検の次はパーツを組んでいきます。
ボルトには次回取り外しやすいようにグリスを塗っておきます。

ホイールハブはカンパニョーロに交換します。
モールトンのフレームエンドの厚みは薄く、そのままではきっちりとクイックシャフトが締まらない場合が多いのでハブを分解して、加工します。
ハブ軸を旋盤で加工します。
フレームエンドの厚みが薄ければ、
適当なワッシャーでも入れて噛ましておけば良いのですが、
こういう対処法は、ごまかしているような感じで個人的にはあまり好きではないです。

ざっとこんな感じですが、まだまだ続きます。
でも今回はこの辺で。