2012-09-08

TSR-30 SP (バーガンディ) 完成車 組み立て

TSR-30 Dropの組み立てです。分解しながら各部を確認していきます。
リアホイールを取り外そうとクイックシャフトを緩めると、リアフォークのエンド幅がリアハブの130mmに対してかなり広がっていて、計測するとなんと136mmもありました!
TSR-30はTSR-9と違って、ドロップバーもフラットバーもロード用のパーツで組まれているので、本来ならロード用のハブに合わせてリアフォークのエンド幅も130mmになるようにフレームを製作するはずなんですが、TSRの場合は、TSR-30もTSR-9と同じ135mm幅(MTB規格)で製作されているんですよね。
TSR-30もTSR-9の135mm幅のままでロード用パーツを取り付けているので、このようになってしまうんでしょうね。
クイックシャフトを締め付ければ、エンド幅も縮まってホイールの固定はとりあえず出来るので、本国では『問題無し』という事なんでしょうね。でも厳密に言うとホイールの固定は出来ても、フレームの中心からホイールが左右どちからに偏りますけどね。
後ほど135mmから130mmに修正します。

パーツも全部取り外し、フォークも分解してから洗浄し、そしてアライメント修正し組み立て直します。

リアのエンド幅を修正するだけではなく、それ以外にもホイールがきっちりと正しい位置になるよう点検しながら修正します。
フロントフォークはアライメント確認後、右側のエンドを少しだけ削りました。

本国で組み立てられてきたブレーキレバー位置。適当な感じです…。ブレーキレバー位置が上にあがりすぎですね。このようなところもきちんと適正な位置に付け直します。

このTSRをご注文いただいたオーナーの体格では、純正のステムが長すぎるので、長さと角度が計測できるダミースステム(左)を取付けて、ステムの長さを決めます。
右の中からステムを選択します。

本国から届いた状態では、ケーブル端末の処理がこんなに長いです。
すご〜く適当な感じ…。

少しでもシンプルに見えるようにハンダ処理して、ヤスリがけ。見た目だけではなく、ディレイラー取付部が転倒などで歪んでしまいリアディレイラーを取り外す際は、ハンダ付けにしておくと、その都度インナーケーブルを切らなくても良いのでいつもこのようにしています。

新車ですがいつも通りいろんな所に手を加えて、パーツを組んで完成です。
このTSR-30は遠く離れた札幌へ旅立って行きました。遠い札幌から飛行機でご来店いただいたんですが、なぜ当店を選ばれたのか率直に尋ねてみたら、こんなお返事をいただいたので了承を得て紹介させてもらいます。


『初めて乗ってみて「これがモールトンか!」と納得しました。サスが思っていた以上に働き、お城製にはかなわないのでしょうが「これがシルキーライド」と納得しました。素晴らしい状態で、遠く離れた京都の林さまのところにお願いして、本当によかった、と実感しています。



 MOKUさんを選ばせていただいたのは、信頼できるお店であると確信したからです。小学生の時、雑誌「キング」に連載していた「サイクル野郎」を愛読してから、自転車が大好きになり、大学生になってバイトで貯めたお金で、ようやくBSのユーラシアを手に入れました(30年たちますが現役です)。その際、「誰も言わなかった自転車の本」という本に出会い、自転車はいかに組み立てをする自転車店の技術が大切か、ということが力説されていました。
 
 モールトンは高嶺の花で、あこがれではあっても、手にすることはない、と勝手に思っていました。20インチで分割して輪行できる旅自転車を作ろうと思い立って、当初はフレームを買い、自分で好きなパーツを組もうと考えていたのですが、金額がそこそこになり、それなら、モールトンも夢ではないな、と思い始めました。それから、雑誌やネットでモールトンを扱っているお店を調べました。その中でMOKUさんのHPを知りました。組まれたパーツを外して、再度、自分のところで点検、組み直し、精度の高いものに仕上げられているのを知り、お願いするならこのお店しかない、と判断しました。

 もっとも、自分の住んでいるところに近いショップであれば、いいのですが、これから一生ものとなる大切なモールトンですので、最高の技術を持たれたお店に頼みたかったのです。でも、やはり、自分の目でお店をみたかったので、今年の春におうかがいしました。実際、林さまにお会いして、誠実さを感じましたので、注文した次第です。

 今はとても満足しています。エンジンはやや非力ですが、乗る喜びを与えてくれる相棒なので、これから旅の思い出を刻んでいくことでしょう。』

とこんなお返事をいただきました。ありがとうございました。
自分の心にだけ留めておこうと思ったんですが、モールトンを手に入れられる時ってこんな風に一生懸命考えて買われる方がほとんどだと思うんです。だからそれに一生懸命応えたいと思うので、それをモールトンを通して汲み取っていただけたことが純粋に良かったと思いました。
いろいろとこだわって仕事をしていくと時間も設備も掛かりますが、自分ならこういう店で買いたいと思える仕事を心掛けています。このブログもご覧になられているとのことですので、また何か気になることがありましたらいつでもご連絡ください。